アズミ・ハルコは行方不明:これぞ現代の寓話。時代を作るのも壊すのも彼女たち

アズミ・ハルコは行方不明:蒼井優と高畑充希の女優対決

いやぁ。素晴らしい映画だった。
「ベティブルー」や「汚れた血」の頃のヌーベルバーグ時代のような、暴力的に熱くて、スゴく冷めてて、スピード感にあふれた傑作だ。

彼女たちのハアハアの監督らしい。

とにかく女の子たちの描き方が素晴らしい。
こうなるだろうなぁと思わせるストーリー展開に乗ったり裏切ったりしながら、走る。

円熟味と凄みを見せる蒼井優に、トト姉ちゃんばかりじゃねぇぞ!っていう高畑充希の素晴らしさ。
これ以上うざい女はいないんじゃないかっていう彼女にも生きる理由が描かれる。誰だって生きてて素晴らしいという大前提の上で、生ぬるいおとぎ話をぶっ壊す金属バット。

スピード感ていうのは情熱が前のめりになった人にしか出せない。
そしてその間の静寂と憂鬱がしっかり描かれてないと。

日本の映画にもこんな素晴らしいのがある。
そう、再認識できて嬉しい。

 

アズミ・ハルコは行方不明:キャラクターたちの憂鬱

安曇春子(蒼井優)ある日突然、行方不明になった28才の地味な田舎のOL。家には認知症の祖母と苛立つ母と、知らんぷりの父。
日々憂鬱をため、郊外店にトイレットペーパーを買いにいく

愛菜(高畑充希)
キャバクラを辞めて現在はネイリストを目指して勉強中のフリーター。とにかくうざい。こんなやついる!って指刺したくなるレベル。さみしがり屋でユキオ、学と行動をともにする。現在放送中の「過保護のカホコ」からの変貌ぶりが素晴らしい。

ユキオ(太賀)
ゆとりですが何か、でもスゴく光ってた彼が、ここでもダントツのクズを光らせる。
「でっかいことがやりたい!」と叫ぶやつほどクズだ。そしてそのクズにも生きる意味がある。学、愛菜と落書きチーム「キルロイ」を始める。

三橋学(葉山奨之)
地元のCDショップで働く地味な青年。ユキオに誘われ、「キルロイ」を始める。JKギャングたちにボコボコにされながらも、アーティスト(風)に扱われる

曽我(石崎ひゅーい)
春子から好かれてる幼馴染。クズの住むべき部屋でセックスし、同時に不倫する。心底クズはモテるという代表格。

そこにJKギャングが絡んでくるんだけど、この子たちが本当に素晴らしい。
男たちへの無慈悲な暴力は、この社会への女たちの復讐。
爽快感とカタルシスを与える際需要な役柄かも。

 

アズミ・ハルコは行方不明:80年代アートのアッパー感と、2010年の閉塞感

JKギャングたちの爽快感以外はみんな憂鬱だ。郊外に住むイオン族たち(特に女性)の憂鬱はすごい。抜けられない柔らかな地獄。
家の中も外も、未来の欠片すらない。
本当の苦しみや悲しみも知らない代わりに、本当に楽しみも知らない。

  • 君いくつになった?
  • 彼氏いるの?
  • 結婚できるタイプだよね
  • 男には高い給料あげなきゃいけないんだ〜

男たちの思考。田舎でも都会でも同じだけど、男にとって女性はいつも詐取するべき性であり女性は使い捨てられることに安住を求める。
こんな会話って本当にあってるんだよ。
会社の喫煙場所で。毎日(笑)

 

型抜きした春子の写真にスプレーした落書きが、町中に描かれ出すとき。
偶像は拡散され、食いつぶされる。
顔のない「属性」たち。

この国はオリンピックで終わるんだろうなぁという「今漂う空気感」を完璧に出してる。
都心以外の90%の国土では、毎日、憔悴と無力感が一枚づつ掛けられてる。

 

アズミ・ハルコは行方不明:復讐はあなたが幸せに暮らすこと

JKギャングたちは指のピストルでおっさんたちをするりとかわす。
現代のボニーアンドクライドは二人ともJKだった。
ラストシーン前の、夢のようでシリアスな「破壊」シーン。そして心に刻まれる言葉

「死んじゃいたいなんて言わないで。あなたが幸せに暮らすことが彼らへの一番の復讐よ」

品格とはこういうものだ。
対峙する二人の女優の姿が「僕らは終わらない」という希望を見せる。

そしてJKたちのシーンに。
身体中から歓喜と幸福感が湧き出るラストシーン。(本当の意味でのラストではないけど)
走る女の子たち。
金属バットで滅多打ちにする女の子たちの笑顔。

生きてるってことを感じてる笑顔。
私たちに未来はある。

やわな青春映画で溢れかえったシネコン。
でも人工甘味料でできたクソのような映画を100%の人が求めてるわけではない。
なめきった寓話ばかりの映画界に風穴をあける「本物の寓話」がここに。

本物の青春映画が、まだまだ作られるはず。

 

【609号室】ガーリーおじさんはまったく役に立たない2017





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