苧坂由香【エンタメ代表】~変化する人たちを眺めていたい・背中をそっと押せたらいいな~

PhotoFunia-1462608836

福岡のライブハウス・キャバーンビートで知り合った苧坂由香さん。
エンタメという音楽イベントを70回も開催してる。この日出演する20代前半の女性アーティストたちから「お姉さん」的な信頼と敬愛をうけていることが一目でわかった。

受付をしてる間、すこしお話をしてみた。

「70回もイベントを続けてるなんてすごいね」

というと苧坂さんはこういった。

「う~ん。続けてるというか、続いてるな~って感じが強いです」

 

僕も月に一回程度キャバーンビートでサニーデイというイベントをやってるけど、イベントの主催・運営、ほんとに骨が折れる。連絡に明け暮れるし、ブッキングに頭を悩ます。集客で胃が痛くなる。
鉄の意志をもった、リーダーシップのとれる人のやることだなあと思っていた。

でも彼女は違うようだ。すごいことやってるねという問いに、少し戸惑いを見せた。とても興味深かったので、後日改めてお話を伺いたいとお願いした。

連休のおわり。雨の振る2016年5月。
ちょっとおしゃれなカフェで。


 

かまってほしい。私の考えを聞いてほしい。そんな願いを持ってはいたけど

 

>>どんな子供時代だったの?

なぜなぜ星人でしたね(笑)いろんなものに興味があって、親の周りをつきまとって「これはなに?」「なぜこうなるの?」ってききまくってた。

うちは自営業で両親が忙しくて。いろんなことを知りたい聞きたいと思っていても「おにいちゃんに聞きなさい・やってもらいなさい」って。

いい成績をとればほめられる、かまってもらえる。
そんな風に思ってた。いろんなことをがんばったのも「親にかまってほしかった」だけだったのかも。

でもあきらめた(笑)さみしいけど。

親に聞きたかったことは自分で調べたり、人に聞いたりするようになった。今でもその流れはあるかな?

「わからないことを聞くこと」から、人との交流って始まるんだと思います。

 

 

両親に認めてほしい。でも自分のやりたいことは違う。

 

>>そのさびしさとは折り合いがついた?

十代の中ごろからさびしさがたまってきて(笑)

どうしてわかってくれないの!という思いが爆発しちゃうことが何度かありました。
人とはわかりあえない。家族ともわかりあえない。不満だらけ。

両親はきちんと学校行って、きちんと就職しろ!という。まあ、あたりまえなんですけど(笑)
何度も言われ続けると、刷り込まれてくる。
私のやりたいことは他にあるんだけど、両親にはやっぱり認めてもらいたいから言うことを聞こうとする。その気持ちのバランスがとれないまま、言われるとおり就職して。

やっぱりパンクしました。最初から無理だった。わかってたのにね。

感情も、気持ちもからっぽになって。そんな私を助けてくれたのはずっと好きだった音楽でした。

PhotoFunia-1462609252

 

音楽は言葉を超える瞬間があるんです

 

>>音楽の良さってなんだろう?

言葉を発するのが怖くなって。
例えば「清らか」って言葉がある。でも私が「清らか」という言葉からイメージするものと、他の人のイメージするものは違う。それが怖くて。話してるうちに「あ、違うように伝わってる」って思っちゃうと話せなくなる。
喋ることが嫌になる。わかってほしいから言葉を選んで話すのに、伝わらない。誤解される。

でも音楽は言葉じゃないんです。うまく言えないけど。言葉を超える瞬間がある。
音楽を聴いてイメージすることは各人違って当たり前。その自由さに救われてます。

 

 

>>音楽の現場には最初から裏方参加だったの?

最初はエレキギターを持って、ステージで音楽を表現する側でした。
アマチュアバンドでコンテストに出たり。

最初は楽しかったんだけど、少しづつ違和感を覚えてきて。まあ、よくある音楽性の違いかもしれませんね。
表現することにこだわったり、考えたりしてたのに自分がやるということに少し疲れたのかも。

バンド解散の後、自分を救ってくれる音楽からも離れそうになって。
そんな時にとても大切な人から

「由香、音楽好きだったらイベント手伝ってみない?」

って誘われたんです。

それはかなり大きなイベントで、たくさんの人が一生懸命動いてて。
ああ!こんな世界があるんだ!って。
すごく感動したんです。

音楽で人をハッピーにする。その表現の仕方にも色々あるんだな。演奏するだけじゃないんだ!って。もう心の中がゴゴゴ〜って燃えました。

PhotoFunia-1462609412

 

流れに乗って、人と出会って、また新しい流れができて。

 

イベント運営をどうやって勉強していったの?

とにかく先輩にくっついて、いろんな人と会いました。そして見よう見まねで。

私、マネージメントの仕事がしたかったんです。
誰か他人をマネージメントするなら、まず自分が自分自身をしっかりマネージメントできないと無理だと思ってたので、行動や予定、あらゆることをメモして、チェックして。そういうの好きだったんですね。性に合うというか。
スケジュールの調整・ブッキング・会場との折衝。嫌いじゃないんです。

小学生のなぜなぜ星人にとっては(笑)わからないことを聞いて、それに答えてもらえる、教えてもらえる。そんな素敵なことってないですね。

子供の頃、満たされなかった「知りたい欲求」が満たされてます。

 

 

自分が笑えない時、人に会いたくない

 

そうはいってもイベント運営は辛いことも多いでしょ?

うーん。うまくいかない時もやっぱりあるし、どうしても疲れが溜まっちゃってイベントの現場で笑顔になれない時があります。
人に「楽しいこと」を届けたいと思ってるのに、笑えない自分がそこにいてもいいのか?せっかく気持ちよく演奏してるアーティストさんに心配かけちゃいけない…。どんどんそんな風に思えてきて。すぐ悩んじゃんですよね〜う〜ん。向いてないのか(笑)

でも最近は割とコントロールできるようにはなってきました。イベント前に気分がぐずぐずしてる時は、美味しいものや甘いものを食べる(笑)いつもは節約してるんだけどこの時は少し贅沢してでも。だから最近は少しラク。

もう一つ苦手なこともあって。それは他のライブを見に行ったりすると「情報収集してる」って思われたり、お客さんから「イベント主さん」として思われたりすること。ほんと苦手ですね(笑)。
ただ音楽の現場が好きで、生の音を聞くのが好きで。ただ自分の楽しみのために行ってるんですけどね(笑)

PhotoFunia-1462609277

 

私がしてもらえなかった事・してもらった事を誰かにしてあげたい

 

イベント【エンタメ】をやってて、嬉しい瞬間って何?

まずブッキングです。エンタメの場合、「最初にイベントありき」じゃないんです。

「あ、この人とこの人を合わせたら、面白い変化が起きるかも?」とか、「この人のこういうとことをあの人に見てもらいたいな」という思いからアーティストを選びます。

お互いにライブを見て、影響を受けたり、その後、当人同士が仲良くなったりするのを見ると嬉しい。

アマチュアアーティストにも悩みは多いんです。あれほど好きだった音楽をやめたいと思う時もあります。そういうことをなかなか言い出せない人も。
私はかまって欲しくて、でも無理だった。
だからなんとなく「ちょっと悩んでて、ちょっと話したい」っていう雰囲気には割と敏感(笑)

小さな頃叶わなかったことが今、誰かの役に立つことがある。なんか全てに意味があるんだなあと思います。

若いアーティストたちの悩みを聞いてあげられたり関わりを持てて、刺激し合えるようになるなんてほんと不思議。思ってもみなかったなあ。

相談に乗ったり、刺激的なブッキングの後、アーティストさんたちの演奏や歌がガラッと変わることがあります。そんな時は本当に嬉しいですね。

 

私は落ち込んでいた時に、ツンっと背中を押してもらえた。
それがなかったら今どうしてるだろうって、ほんと怖い。
だから、それを必要としてる人に、私も「ツン」をあげたいな。

 

 

出会いは無敵。人と人のエネルギーが交わる時を作っていきたい。

 

>>イベントが続いていく秘訣ってなんだろう

イベントを続けていくって気持ちはあまりないんです。人と人が出会うことで生まれる良いことを信じてるだけです。それは音楽イベントという形にはこだわらないかも。

続けていこうとすると無理が出る。今は出会わせたい人たちがたくさんいて、イベントを組みたくなってるから、頑張って組む。割とシンプルです。

音楽の素晴らしさはもういうまでもないけど、音楽を通じて知り合える、出会える人のエネルギーってすごいんです。私はアーティストではないけれど、新しい音楽や新しいエネルギーが生まれる瞬間に立ち会うことができる。
人が思いっきり笑える瞬間を見ることができる。

そのエネルギーの渦を眺めていたい。ニヤニヤしながら(笑)

 

 

私はイベントで育てられてる。感謝してます。

 

>>ご両親は今の由香さんを見てどう思ってるのかな?

最近は理解してくれてます。認めてくれてる。
あんなに嫌いだった家族の事を、今はすごく好き。お互いにいろんな経験があって、角張った心が丸くなったような気がします。

他の人からよく「そんなお金にならないことなぜやってるの?」って聞かれることがあります。生活のためにはもちろん仕事しないといけない。バイトしないといけない。

エンタメというイベントは利益を第一には考えてません。そこで起こったアーティスト同士の化学変化や人のつながりはお金では買えません。

「嬉しい」って思える瞬間をお金に換算したらいくらになるのかわからないけど、「やったー!よかったー!嬉しい!楽しんでもらえた!」っていうのはもう最高のプレゼント(笑)

もちろん収益が出れば嬉しいですけどね(笑)

イベントをやることによって自分自身が育てられています。成長できてる。関わったたくさんの人が支えてくれる、磨いてくれる。感謝してます。

PhotoFunia-1462609322

 

インタビューをおえて

知りたい・話を聞きたいっていう欲求がすごく強いんだなあ。

インタビューされてる側のはずなのに、僕が質問攻めにある瞬間もあった(笑)
苧坂由香さんはきっと悩みがちなんだろう。
満たされない心を持っていたんだろう。
だから同じように、ちょっと立ち止まってしまうことのある若いアーティストの気持ちがわかってあげられる。彼女の強みはそこだと思う。頑ななところと、流れに身を任せるところがあって。それがパタリ、パタリと変化する。

自分のカラーを前面に出して、演者を決め、コンセプトをしっかりさせたイベントをやる人が多い中、「人と人が交わること」「違うカラーが混ざること」に重きを置いたイベントはあまりないのかもしれない。
「エンタメ」というイベントが今後どんな展開をするのか?
苧坂由香という人が次に何をしでかすか(笑)

彼女の「変化」を僕はとても楽しみにしてる。
僕自身が彼女の言う「異文化交流」になれると嬉しいな。

何か一緒に企みたいなと密かに思ってる。